『シン・ゴジラ』考察、特に石原さとみは必要不可欠

※ネタバレ含みます!

以下、感想というか考察というか拾い集めというか、情報量が多いのでぜひ早口で読んで頂きたい。

いやぁ、良かった。庵野総監督にまんまと嵌められた。公開初日に見てから一週間以上シン・ゴジラのことしか考えられず、暇さえあれば考察やら批評やらを読み耽った。

ゴジラが初めて熱線を吐いたときはその絶望感に文字通り口が空いたままになった。赤い炎が街中に広がった時にどれだけの人が死んだんだよと想像しただけで怖くてたまらなかった。ゴジラ自身自分の能力を知らず、怒りから思わず炎を吐き、こんなことできるのか!と悟ったゴジラはさらにその力を集中させて紫の熱線を吐く。その後の紫の熱線の乱発はもう世界を滅ぼしに来た神としか思えなかった、、、。



■石原さとみのこと

シン・ゴジラの評判を見ていると石原さとみの演技が下手だとか英語が変だとかあの役自体不要だとかの意見を結構目にする。僕はまったく逆の評価。むしろ全編通して緊張感ある中で適宜それを緩和するのに石原さとみは必要不可欠だと思う。

石原さとみといえば英会話 AEON の CM、ドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』などで英語を披露しており「石原さとみ=英語しゃべれる女優」というイメージを持つ人は多いはず。かつ、緊張感あるストーリーの中でそれを緩和する存在としてコミカルな胡散臭い英語を喋るカヨコ・アン・パタースンは重要な存在だ。石原さとみは『進撃の巨人』で弾けたオーバーな演技をしたことでも注目されていた。

僕は、このアメリカから来たカヨコ・アン・パタースンはいわゆるハリウッド版ゴジラのメタファーと考える。カヨコが「ゴッジーラ」と口にする度に視聴者はハリウッド版ゴジラを思い描く。そして重要なのが「ゴッジーラ」とわざわざ発音するのが面倒くさくなって「ゴジラでいいや」となる瞬間である。これを「ゴジラはやっぱり日本だよね」というメッセージではないかと考える。

カヨコ・アン・パタースンがいなければメリハリがなくなりつまらなくなる。そしてその役には石原さとみしかいない。



■人間ドラマ

シン・ゴジラには人間ドラマがないからつまらないという意見もちらほら見かける。樋口監督からしたら『進撃の巨人』で余計な人間ドラマ入れやがってと言われ『シン・ゴジラ』では人間ドラマがないから面白くないと言われどっちやねんって感じだろうw

僕にはこの作品に人間ドラマがなかったとは到底思えない。行間、コマ間?登場人物間には十分なドラマがある。一番わかりやすいのが石原さとみ扮するカヨコと長谷川博己扮する矢口蘭堂のドラマである。

この二人は最初初対面で対立していたが、共に同じ問題に向き合っていく中でその距離を縮めていく。吊り橋効果もあるのかもしれない。カヨコが「ゴッジーラ」から「ゴジラ」と言い換えるシーン、この時カヨコは矢口に心を開いているからこそ肩ひじ張らず「ゴジラでいいや」と口にしたのだ。妄想癖のある僕は近い将来この二人は大人の関係になるんだろうななんて想像していた。

ドラマは他にもある。正反対の矢口と赤坂の対決、矢口と泉の友情/信頼とか。結構ベタな設定が登場人物には与えられていてそれを全面に押し出さず視聴者に補完させることで、余計な尺を使う必要がなくなり庵野総監督は見せたいシーンに注力できたのであろう。

■BGM

劇中曲も賛否両論ある。まずは「デン・デン・デン・デン・ドンドン」。いざ!というタイミングでほとんどの日本人に聞き馴染みのあるティンパニのフレーズが鳴り出す。ここで「庵野さんやってもうた、、、」となるか「庵野さんやってもうた!!!」となるかは人それぞれ。そう、エヴァンゲリオンの BGM が流れる。元曲は「Decisive Battle」だがその主旋律がないバージョンの EM20 系楽曲だそうだ。

実はエヴァの曲「Decisive Battle」にも元ネタがあると言われている。「007 ロシアより愛をこめて」の BGM「Takes The Lektor」である。これが元ネタであるというのは高木弘樹氏が庵野総監督に007のサントラを貸したなんて逸話からも伺える。

また、このティンパニのフレーズはあの大ヒット映画「踊る大捜査線」でも使われている。こちらはエヴァンゲリオンをパクったそうだ。これはもう何が元ネタで何がパクりなのかわけがわからない。バラエティー番組でもさんざん使われているので日本においてはもう「立ち向かう時の曲=デン・デン・デン・デン・ドンドン」ってことでいいのではないか?しつこいなとは思ったけどw



次に、歴代のゴジラシリーズの音楽を作ってきた伊福部昭の曲がそのまま使われている。そのままなのでモノラルなのだ。これがステレオ音響の中突然モノラルで鳴り始めるので結構な違和感が生じる。僕もこれには違和感があり、なぜ鷺巣詩郎が苦心して録音したバージョンを使用しなかったのかがわからない。お馴染みのゴジラ曲を鷺巣詩郎がいかにアレンジするか?はむしろ僕の楽しみの1つであったので非常に残念だ。庵野総監督の意図が知りたい。エンドロールで伊福部楽曲が流れるのは逆に感動であった。



■批判

話題作はその批判を見るのも面白い。シン・ゴジラだとだいたいこんな感じの批判がある。

・私が思うゴジラはこれじゃない
・ゴジラじゃなくてエヴァ
・感情移入できない
・子どもには楽しめない
・政治的に受け付けない

『私が思うゴジラはこれじゃない』
そりゃそうでしょう。だって新しいゴジラなんだから。撮影開始直前スタッフ打合せで庵野総監督は「今までのゴジラをなかったことに」と言っている。「怪獣のいない世界にゴジラが現れる」というのが1つのコンセプトなのだ。それ故に「怪獣」という言葉は使われず「巨大不明生物」と呼ばれる。ゴジラや怪獣映画を知っている時点であなたはあの映画の世界の人ではないわけ。楽しみたかったら想像力で映画の中に入っていくべし。





『ゴジラじゃなくてエヴァ』
エヴァンゲリオン自体が特撮の影響を受けているのでなんともなぁな批判。演出としては古くさいから平成以降の特撮/SFを見慣れてるとエヴァとしか思えないかもしれない。音楽ガー言うのは上記の通り、そもそもエヴァの時点でオマージュしてるわけだし。エヴァはどちらかというと少年少女の葛藤を描いたもので、大人の頑張る姿を描いたシン・ゴジラとは似ても似つかないと思う。監督が同じだから表面上似てるというだけ。「カリオストロの城」はルパンじゃなくてラピュタと言うようなもの。

『感情移入できない』
登場人物の家族が出てこないとか逃げ惑う人々や殺される人々が描かれないから感情移入できなくてつまらないという意見もある。果たして感情移入しないと楽しめないものだろうか?いや、僕は全然矢口に感情移入した。結局のところ自分に似ている人物に感情移入するものなので単に自分に似た登場人物がいなかったというだけだろう。残念でした。

『子どもには楽しめない』
小難しいから子どもには楽しめないだろうなんてよく見かけるが、子どもには子どもなりの楽しみ方があるわけで。自分たちが子どもの頃に見た印象に残っている映画はその細部まで理解出来ていただろうか?それこそ「子ども(向け映画)はこうあるべきだ」という価値観の押しつけでしかないだろう。現にシン・ゴジラを楽しんでいる子どもたちをちらほら見かける。先入観がない分むしろ子どもの方が純粋に楽しめたのかもしれない。

【参照】小5次男とシン・ゴジラを観てきました。(ネタバレなし)
http://suminotiger.hatenadiary.jp/entry/2016/08/12/165752



『政治的に受け付けない』
政治家が主人公だったり放射能や原発のメタファーだったりシュプレヒコールとか、そういうのを批判的に捉えたり政治的にどうこう言いたくなるのもわからなくはない。が、シュプレヒコールは「ゴジラを守れ」と「ゴジラを倒せ」とが混ざっていてどちらとも取れる(取れない)演出をしていて、そのことからもわかるように庵野総監督は単に現代を客観的に切り出しただけなので、それに対して政治的にどうこうとか言っちゃうのはなんだかなぁである。





■その他

「シン」これはもう単純に「新」でいいのではないかと思う。逆にシン・エヴァンゲリオンはどれだけ斜め上に行くんだよって期待値が上がってしまう。

「蒲田文書」と呼ばれるものがある。エキストラに配られた演技指導文書でリアリティを追及するこだわりとエキストラへの気遣いが感じられる文書である。




「初代は赤かった」説があり、それ故にシン・ゴジラは赤く光っているらしい。闇夜に映る様はウルトラマンに見えるけど。

「紫の熱線」赤い炎を吐いた後にエネルギーを集約して青でもなく白でもなく紫に光る熱線になるのがまた新しくカッコいい。なぜ紫なんだろう?エヴァ初号機もニューノーチラス号も紫だし単に庵野総監督の好みなだけだろうか?

シン・ゴジラはリヴァイアサン説。

「脚本が300ページ」もあるんだとか。登場人物がみな早口だったのは「政治家や頭のいい人は早口だから」ではなく単に早口でないと尺に収まらないから、じゃないよねw

【参照】「シン・ゴジラ」舞台裏を支えたのはiPhoneとiPad? 監督が明かす
https://www.buzzfeed.com/yuikashima/shi-n-go-ji-ra-ha-iphone-de-satsuei-sa-re-ta-higuchi-kantoku

「ヤシオリ作戦」みんなヤシマ作戦っぽいって言ってるけど、これは八岐大蛇を酔わせた八塩折之酒に由来しているらしい。庵野さん日本好きなんだなと感じる。
※実際にこの名前の酒を売ってるらしい(Web1.0時代のサイトだしなんか怪しいけど)

【参照】【ネタバレ有】「シン・ゴジラ」感想と考察
http://nemopatitur.hatenablog.com/entry/2016/08/01/182333

【参照】出雲神話伝説の酒再現!「八塩折の酒」
http://www.kokki.jp/yashi5.htm

「ゴジラには舌がない」完全生物なので食事しなくていいから舌がない。舌がないから経口投与時に吐き出すという行動が取れない。

「庵野版風立ちぬ」結構な人たちが風立ちぬとの共通点を挙げている。そしてシン・ゴジラ見た後に風立ちぬ見る人が多い。



「私は好きにした。君たちも好きにしろ。」これは庵野総監督が「俺の好きに作ったからお前ら好き勝手に解釈しろ」ってことらしい。

■参考


※あれもこれも CG だったのか

【参照】東宝はなぜ『#シン・ゴジラ』を庵野秀明氏に託したか~東宝 取締役映画調整部長・市川南氏インタビュー~
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sakaiosamu/20160812-00061026/
※ここにあるように大人向けに作られているので大人しか楽しめませんw

【参照】シン・ゴジラ:感想(約1万5000字:未鑑賞者の閲覧を禁ず)
http://toyozumikouichi.hatenablog.jp/entry/2016/08/05/225033
※石原さとみについて詳しく解説あり「ツンがデレてきた」

【参照】シンゴジラが58点な感性にウケる大味なエンタメ
http://azanaerunawano5to4.hatenablog.com/entry/2016/08/03/213846
※この映画を楽しめなかった人のブログに対しての批評

【参照】庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』を見てマーケティングが完全に変わると怖くなった。《天狼院通信》
http://tenro-in.com/tsushin/23973
※CM、宣伝について

【参照】『シン・ゴジラ』あたまのわるい感想
http://www.kansou-blog.jp/entry/2016/08/09/124700
※ぶっちゃけこれでいい、先入観ない感想、子ども目線でこれなら十分楽しめると思う

【参照】【シン・ゴジラ】尾頭ヒロミいいよねという画像まとめ【ネタバレあり】
http://togetter.com/li/1010249
※シン・ヒロイン尾頭ヒロミ、こういう遊び方がネット時代的でいいよね






かわのくんとは

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